ヒルドイドは元々、医療用に開発された保湿力の高い医薬品ですが、近年では美容目的でも使用する方が増えています。特に肌荒れ・乾燥対策・血行促進を目的として使用する方が多く、高い保湿力が美容の面でも注目されています。
しかしヒルドイドの美容目的での使用は、社会全体でも由々しき事態としてテレビなどにも取り上げられて、論争を巻き起こしていました。医薬品を美容目的で使用することにデメリットはないのか、なぜ美容目的で人気になったのか、気になりますよね。
この記事では、ヒルドイドの効果や美容目的で人気となった理由、入手方法などをくわしくご紹介していきます。ぜひこの記事読んで、ヒルドイドが美容目的での使用が推奨されていない理由を理解して、正しい使い方を身につけましょう。
ヒルドイドの効果
ヒルドイドは皮膚の乾燥を改善するために処方されるクリームで、ヘパリン類似物質を配合しています。この成分は強力な保湿力を持ち、血行促進効果で痛みや腫れを治す効果もあります。皮膚科などの病院で、皮膚の乾燥やしもやけ・アトピー性皮膚炎などの症状がある際に処方される医薬品です。
ヒルドイドの大きな特徴が、ヘパリン類似物質を配合していること。そもそもヘパリンは人の肝臓で生成されて、血液を固まりにくくする作用を持っています。そしてヘパリン類似物質は、ヘパリンと似た構造をしている成分です。
ヘパリン類似物質の最も大きい特徴は、非常に優れた保湿効果を有していることです。この成分は保水力が高く、水分子を引き寄せて保持することができます。そのため乾燥した肌にしっかりとうるおいを与えるだけでなく、うるおいを閉じ込める力が強いです。乾燥肌やアトピー性皮膚炎になっている肌はバリア機能が低下している状態なので、ヒルドイドを塗ることでうるおいを高めて荒れにくい肌へと導いてくれます。
ヒルドイドのもうひとつの魅力が、血行促進効果が期待できる点です。ヘパリンと同じく血液を固まりにくくする作用によって、血行を促進してくれます。血液は体内に栄養を行き渡らせるための通り道となるので、血行の促進は冷えや血行不良によるトラブルの改善に効果的です。たとえば、しもやけは寒いところで血液の循環が滞ることで起こります。そのためしもやけにヒルドイドを塗ると、血行が改善されてしもやけの症状の改善につながります。
ヘパリン類似物質はただ保湿するだけでなく、抗炎症作用も期待できます。ヘパリン類似物質には、皮膚の赤みやかゆみ・炎症を引き起こすトリガーとなる物質の働きを抑制する働きがあります。炎症を抑えることでかゆみを素早く鎮めてくれるので、かゆみを伴う辛い皮膚疾患に力を発揮します。そのため、保湿で荒れにくい肌をつくるだけでなく炎症を鎮めてくれるヒルドイドは、アトピー性皮膚炎などの炎症が起こる疾患の治療にも効果的です。
ヒルドイドが美容目的で人気となった理由
ヒルドイドは医薬品でありながらも、近年では美容目的での使用が人気となり、話題を集めていました。ここではなぜヒルドイドが美容目的で人気となったのかをくわしく解説していきます。
人気となった理由①:保湿によるシワへの効果
シワと乾燥は、実は深い関係があります。肌は乾燥していると、角層の保水力が低下して表面に浅いシワができます。これは乾燥小ジワと呼ばれて、乾燥したまま放置しておくと深いシワに進行しやすいです。
また肌が乾燥していると、肌のバリア機能が低下して紫外線や摩擦などの外部刺激を受けやすくなります。そしてバリア機能が低下している肌が外部刺激を受け続けると、肌のハリや弾力に関わるコラーゲンやエラスチンを破壊して、ハリ不足・シワを引き起こしてしまいます。
その点、ヒルドイドには保湿効果があります。そして特徴的なのが、うるおいを蒸発させないだけでなく、水分を溜め込む性質がある点です。そのためうるおいを長時間肌にとじ込めます。
さらにシワの中でも、乾燥小ジワに対して効果を発揮します。ハリ不足によって起こるシワに対しても、角層をうるおいで満たすことでふっくらとハリのある肌に導き、シワを改善する効果が期待できますよ。
人気となった理由②:保湿・血行促進によるニキビ改善効果
ヒルドイドの主成分であるヘパリン類似物質は、肌の水分を保持する能力に優れています。ニキビは皮脂の過剰分泌や毛穴の詰まりが原因で発生しますが、肌が乾燥すると皮脂腺が過剰に働き、さらにニキビを悪化させることがあります。ヒルドイドを使用することで肌にうるおいを与え、乾燥による皮脂の過剰分泌を抑えることができるため、ニキビの予防に効果的です。
また、ヒルドイドには血行促進作用もあります。血行が良くなることで、肌に必要な栄養素や酸素が行き渡り、ターンオーバーが正常化します。ターンオーバーが整うことで、古い角質や不要な皮脂がスムーズに排出され、毛穴の詰まりが軽減されます。これにより、ニキビができにくい健康的な肌環境が整うのです。
さらに、ヒルドイドは炎症を抑える効果も持っており、既にできてしまったニキビの赤みや腫れを軽減する助けにもなります。これにより、ニキビの改善だけでなくニキビ跡の色素沈着を防ぐ効果も期待できるため、美容目的での使用が増えているのです。
人気となった理由③:コスパが良い
実は美容目的として人気になった理由は、これが一番大きな原因かもしれません。通常のスキンケアや美容成分においても、乾燥対策や血行促進効果があるものは多いです。しかし通常であれば、効果が高いものほど値段も高くなります。
しかし、ヒルドイドは医薬品として医師から処方されることが多く、医療保険の適応内となるため、3割負担で入手できます。医療保険の適応内として安く手に入る上に、保湿効果や血行促進効果などの高い効果が期待できるとして、ヒルドイドの美容目的での使用が注目されています。
ヒルドイドはどうやって入手できるの?
医薬品は、医師の診断に基づく処方箋が必要な医療用医薬品と、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談して購入するOTC医薬品に分けられます。そしてヒルドイドは、処方箋が必要な医療用医薬品です。そのためヒルドイドを入手するためには、医師によって発行された処方箋が必要となります。ヒルドイドが欲しい方は、皮膚科や美容クリニック等で診察を受けてから処方してもらいましょう。
ヒルドイドは安いのに効果が高くコスパが良いアイテムとして、美容目的での使用が増えていました。しかし厚生労働省が、特許が切れた先発医薬品の窓口負担を2024年10月から引き上げる制度改正として挙げた対象品目にヒルドイドが含まれています。同じ効能を持つ安価な後発薬が普及していることが一般的な理由ですが、美容目的での不適切な利用を抑制する効果も期待されています。
また、ヒルドイド自体は医療用医薬品なので、薬局等では購入できません。しかしヒルドイドと同じくヘパリン類似物質を配合したアイテムは、OTC医薬品として販売されているものもあります。病院にいく時間は取れないが、ヘパリン類似物質で保湿などのケアをしたいという方は、薬局やドラッグストアで販売されているヘパリン類似物質配合のOTC医薬品の使用を検討してみましょう。
ヒルドイドの美容目的での使用が推奨されない理由
ヒルドイドは、皮膚疾患の治療を目的とした医薬品です。保湿効果の高さや血行促進効果の高さから近年では美容目的での使用が注目されてきましたが、美容目的での使用は推奨されていません。その理由には、大きく2つの理由があります。
ヒルドイドの美容目的での使用が推奨されない理由①:医療保険の不適切な利用にあたる
ヒルドイドが美容目的で人気となった理由には、美容目的で人気となった理由③で解説した「コスパの良さ」があげられます。しかし、この点こそが美容目的での使用が推奨されない理由です。ヒルドイドはあくまでも皮膚疾患を治療する医薬品です。言い換えると、皮膚疾患を治すために必要な薬だからこそ、国が医療費の一部を負担して医療保険に適応されるので、自己負担が少なくなっています。決してヒルドイド自体の値段が安いわけではないのです。
しかし美容目的となると、病気の治療だからと国が負担している負担分が無駄遣いとも捉えられます。近年では医療費は国政を圧迫している原因として問題視されることも多く、これはヒルドイドの美容目的での使用にも当てはまります。ヒルドイドの美容目的での使用は医療費の適切な使用という観点からは逸脱しており、推奨されていないのです。
ヒルドイドの美容目的での使用が推奨されない理由②:医薬品と化粧品では使用目的が異なるから
ヒルドイドは医薬品であり、美容目的での使用は考慮されていません。医薬品と違い、化粧品は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とさえるもので、人体に対する作用が緩和なもの」を指します。そのため化粧品は正確な使い方を知らずに使用しても、副作用が起こることは比較的少ないです。
しかし薬品であるヒルドイドは化粧品ではありません。医薬品には、厚生労働省が効果を認めた成分が配合されており、濃度もしっかりと効果が出るように高められています。そのため、間違った使い方をすると副作用が出る可能性があります。ヒルドイドは比較的副作用が少ない医薬品ですが、血行促進効果があるので赤みやかゆみといった症状が副作用としてみられるケースもあります。医師の指導があった使い方以外で使用するのは危険を伴うので、美容目的での使用は推奨されていません。
まとめ
ヒルドイドは、美容目的で使用する際に非常に効果的なアイテムである一方、医薬品であることを理解し、適切な使用方法を守ることが重要です。高い保湿力と血行促進効果により、乾燥やくすみを防ぎ、透明感のある健康的な肌を目指すことができます。また、手頃な価格で購入できるため、コスパにも非常に優れています。
しかし、ヒルドイドはあくまでも医師の処方が必要な医薬品であり、化粧品ではありません。そして医薬品は、本来の目的とは異なる反応である副作用が出る可能性があります。そのためヒルドイドは美容目的での使用は避けるようにしましょう。