「しわ」は多くの女性が抱える悩みではないでしょうか。加齢とともにしわは増え、特に女性では、女性ホルモンがしわの形成に関与しています。そのため、そもそもしわはどうやってできるのか、何が原因となるのか知っておくことが大切です。
この記事では、しわの深さによる分類やしわができる原因について解説しています。
しわの分類や原因を知り、肌のケアに活かしましょう。
皮膚の老化
皮膚は、表皮、真皮、皮下組織の3層構造です。老化の原因は多岐にわたり、紫外線によるダメージ、活性酸素の蓄積、そして加齢などが挙げられます。これらの要因により、皮膚の各層は異なる変化が発生します。表皮は薄く硬くなる傾向がある一方、顔の表皮は例外的に厚くなりやすいです。水分を多く含む真皮は厚くなります。
老化が進行すると、皮膚にある細胞の機能低下が起こり、表皮の薄化と角質層の肥厚が生じます。これにより、角質層のターンオーバーが遅延し、水分保持力が低下して乾燥を引き起こします。皮膚の乾燥は小じわの形成につながる要因です。
しわを予防するターンオーバー
しわを予防するためにはターンオーバーの機能維持が大切です。ターンオーバーとは、表皮の新陳代謝サイクルのことで、新しい表皮に入れ替わるのに4週間ほどかかります。若い時はターンオーバーがスムーズに働き、バリア機能を維持できるため肌のハリを保てます。
しかし、年齢を重ねるにつれて、このターンオーバーは徐々に遅くなっていきます。その結果、表皮の乾燥が進行し、皮膚の弾力性が低下します。さらに、ダメージを受けた細胞や老化した細胞が皮膚表面に留まる時間が長くなり、これらがしわの形成を促進する要因となります。したがって、健康的な肌を維持し、しわの発生を最小限に抑えるためには、ターンオーバーの速度を可能な限り維持することが大切です。
しわの深さによる分類
しわは、深さによって3つの段階に分類されます。浅いものから順に「乾燥性のしわ」「表皮性のしわ」「真皮性のしわ」と呼ばれています。それぞれのしわについて詳しく解説していきます。
乾燥性のしわ
乾燥性のしわは、皮膚の水分量が低下することで発生する細かいしわです。皮膚の老化によりターンオーバー機能が低下すると、角質層が乾燥しやすくなり、皮膚の柔軟性や水分保持力が低下します。その結果、表皮に細かいしわが発生しやすくなります。
この種のしわの形成を防ぐためには、表皮の水分量を保つことが大切です。ここでヒアルロン酸が大きな役割を果たします。しかし、表皮のヒアルロン酸は加齢とともに減少することが知られています。そのため、日常的な保湿ケアが必要になります。化粧水などを使用して適切な保湿を行うことで、乾燥性のしわは目立ちにくくなります。
表皮性のしわ
表皮性のしわは、老化に伴って発生するしわです。若い時期には皮膚のハリが十分にあるため、表情によるしわは一時的なものに留まり、すぐに元の状態に戻ります。しかし、年齢を重ねるにつれて皮膚のハリが低下し始めると、表情によるしわが次第に恒常的なものとなっていきます。これが表皮性のしわの特徴です。
真皮性のしわ
真皮性のしわは最も深刻なタイプのしわで、皮膚の真皮層まで達している深いしわを指します。表皮性のしわが進行すると、やがて真皮性のしわへと発展していきます。真皮層はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの成分を含み、皮膚の弾力性や水分保持能力を担っている層です。また、皮膚の構造的な土台としても機能しているため、しわがこの層まで到達すると、しわを修復するのは困難です。
しわができる原因
しわができる原因として、以下の6つが挙げられます。
- 紫外線の暴露
- 女性ホルモンの変化
- 加齢
- 乾燥による水分の減少
- 喫煙習慣
- 遺伝的要因
それぞれ具体的に解説していきます。
紫外線の暴露
紫外線に繰り返し当たることで、活性酸素が増加し、これが引き金となって酸化ストレスが引き起こされます。この酸化ストレスは、肌の老化を加速させる光老化の主な原因です。紫外線によって生成された活性酸素は、肌の弾力を保つタンパク質であるコラーゲンの産生を抑制します。コラーゲンの減少は、肌の弾力性低下につながります。さらに、活性酸素はコラーゲンだけでなく、表皮を構成するさまざまな成分に対して悪影響を及ぼします。
このように、紫外線の影響は肌の表面だけでなく、肌の奥深くまで届くのです。日焼け止めの使用、帽子や日傘の利用、できるだけ日陰を歩くなど、日常生活の中で紫外線との接触を最小限に抑える工夫が必要です。また、近年では紫外線だけでなく、ブルーライトなどの可視光線も肌の老化を促進する可能性が指摘されています。スマートフォンやパソコンの使用時間が長い現代人にとって、これらの光からも肌を守ることが大切です。
女性ホルモンの変化
閉経前後の時期に起こるエストロゲンの減少は、肌の状態に変化をもたらします。このエストロゲンの減少により、まず起こるのが皮膚の変性です。エストロゲンには肌の弾力を保つコラーゲンの生成を促進する作用があります。このホルモンが減少すると、コラーゲンの生成量も減少し、肌の弾力が失われていきます。さらに、エストロゲンには肌の水分保持機能もあるため、水分量の減少につながります。このように、エストロゲンの減少は水分量の減少や弾力性の低下をもたらし、しわの形成につながるのです。
加齢
加齢とともに肌は乾燥しやすくなります。これは、皮脂の分泌量が減少し、肌の水分保持力が低下するためです。乾燥した肌は、外部からの刺激に弱く、しわができやすい状態にあります。また、ターンオーバーつまり古い角質が剥がれ落ち、新しい細胞に生まれ変わるサイクルも遅くなります。
このターンオーバーの遅れは、肌にダメージが蓄積されやすくなることを意味します。紫外線などによって傷ついた肌細胞が長く留まることで、肌の状態はさらに悪化しやすいです。加えて、真皮層ではコラーゲンやエラスチンなどの弾力繊維の生成量が減少し、既存の繊維も劣化していきます。これらの変化が複合的に作用して、肌の弾力性が低下し、しわの形成につながるのです。
乾燥による水分の減少
皮膚の水分保持力が低下すると、肌の柔軟性が低下し、しわの形成に関わります。肌の表面には、角質層と呼ばれる防御壁があります。この角質層の役割は、外部からの刺激や細菌の侵入を防ぐと同時に、体内の水分が蒸発するのを防ぐことです。しかし、この角質層の機能が低下すると、肌の水分保持力が失われ、乾燥が進行します。乾燥した肌は柔軟性を失い、外部からの刺激に対して弱くなります。その結果、肌にしわやたるみが生じやすくなるのです。
乾燥によるしわの形成は、他の要因によるしわとは少し異なる特徴があります。例えば、紫外線や加齢によるしわは、時間をかけてじわじわと形成されていくのに対し、乾燥によるしわは比較的短期間で現れることがあります。特に、季節の変わり目や空調の効いた室内など、急激に環境が変化する状況下では、肌の乾燥が一気に進行し、しわが目立つようになることがあります。
しかし、乾燥が原因のしわであれば、適切なケアにより改善が可能です。日々の保湿ケアを行うことで、肌の水分量を維持し、しわの改善や予防につなげることができます。具体的には、洗顔後すぐに化粧水や乳液、クリームなどで保湿を行うこと、入浴後は早めにボディローションを塗ること、室内では加湿器を使用するなどの対策が効果的です。
喫煙習慣
毎日1箱のタバコを1年間吸った場合、非喫煙者と比べてしわが発生するリスクが5.8倍も高くなるという結果が出ています。これは、1日2時間以上の紫外線暴露による影響(2.65倍)を大きく上回る数字です。さらに、喫煙と紫外線暴露が重なると、しわの発生リスクは非喫煙者の11.4倍にまで跳ね上がります。
タバコに含まれる有害物質は、肌の弾力を保つ重要なタンパク質であるコラーゲンを減少させます。一方で、エラスチンという別のタンパク質は増加しますが、これは正常なエラスチンではなく、異常な構造を持つものです。この異常なエラスチンの増加は、肌の弾力性を低下させ、しわの形成を促進します。また、喫煙による酸化ストレスは、肌の細胞を直接的に損傷させ、早期の老化を引き起こします。
喫煙者の肌に現れる特徴的な変化として「スモーカーズフェイス」と呼ばれる状態があります。これは、目尻のしわが深くなる、頬がこけて顔全体がやせこけた印象になる、肌の色が灰色がかって見える、といった症状です。特に、ほうれい線は、喫煙者に特徴的なしわとして知られています。
遺伝的要因
遺伝的要因として、CDというミトコンドリアDNAが関与しています。ミトコンドリアは細胞内のエネルギー生産工場とも呼ばれ、その機能は肌の健康維持に欠かせません。CDの変異や損傷は、細胞のエネルギー生産効率を低下させ、結果として肌の老化を加速させる可能性があります。
遺伝的要因がしわの形成に与える影響は、人種や地域によって異なることが報告されています。例えば、ドイツ人は紫外線への暴露量が多いことが特徴的で、これがほうれい線やたるみの形成とCDに関連していることが分かりました。一方、日本人を対象とした研究では、CDと眼周囲や唇のしわとの関連性が指摘されています。このように、遺伝的要因がしわの形成に与える影響は、環境要因や生活習慣と複雑に絡み合っており、個人差も大きいと考えられます。
しわは一生消えない?
人間の肌にはターンオーバーと呼ばれる重要な機能があります。これは、古い皮膚細胞が剥がれ落ち、新しい細胞に入れ替わる過程です。若い時期には、このターンオーバーのサイクルが比較的短く、約28日程度で皮膚が生まれ変わります。この機能により、軽度のしわや肌のダメージは自然に回復する可能性があります。
例えば、若い時期に現れる表情じわのような浅いしわは、十分な睡眠や適切なスキンケア、健康的な生活習慣を維持することで、ある程度改善される可能性があります。これは、皮膚の再生能力が高く、弾力性も保たれているためです。しかし、年齢を重ねるにつれて、皮膚の機能自体が低下していきます。ターンオーバーの周期は長くなります。さらに、コラーゲンやエラスチンの生産量も減少し、肌の弾力性が失われていきます。このため、年齢とともに深くなったしわ、特に長年の表情の繰り返しや重力の影響で形成された深いしわは、皮膚の機能だけでは改善が困難です。
まとめ
皮膚の老化は、紫外線、活性酸素、加齢などの要因により進行するものです。表皮、真皮、皮下組織の各層に異なる影響を与えます。老化では、細胞機能の低下やターンオーバーの遅延が起こり、皮膚の乾燥やしわの形成につながります。
しわは深さによって乾燥性、表皮性、真皮性に分類され、その原因には紫外線暴露、ホルモン変化、加齢、乾燥、喫煙、遺伝的要因などがあります。特に紫外線と喫煙は大きな影響を与え、しわの発生リスクを高めます。
若い時期の浅いしわは適切なケアで改善の可能性がありますが、年齢とともに深くなったしわは皮膚機能だけでの改善が困難です。しかし、日々の保湿や紫外線対策、健康的な生活習慣の維持により、しわの予防や進行を遅らせることができます。皮膚の健康を保つためには、これらの要因を理解し、適切なケアを継続することが大切です。