「肌の炎症が起こるのはなぜ?」「肌の炎症による赤みやかゆみが落ち着かない」と悩んでいる方も多いでしょう。肌のバリア機能が低下すると、普段は問題のない物質にも刺激を感じてしまうことがあります。では、なぜ炎症が起こってしまうのでしょうか。今回は、炎症が引き起こされるメカニズムについて解説するとともに、その対処法や予防法も紹介します。
肌の炎症が起こるメカニズム
炎症とは、異物を排除しようとして起こる「免疫システム」による反応です。
細菌や化学物質などの異物が肌内部に侵入しようとしたり、細菌感染によって肌細胞が傷つけられたりすると、免疫に関わる細胞が患部に集まり異物を排除しようとします。このとき、免疫細胞は異物だけでなく周囲の細胞にも作用し、赤みや痛み、かゆみなどの症状が引き起こされます。これが、炎症のメカニズムです。
通常は肌に備わっているバリア機能が働き、異物が体内に侵入するのを防ぐため、炎症は起こりません。しかし、何らかの原因でバリア機能が低下すると細菌やウイルスなどの異物が侵入し、炎症が起こりやすくなります。
肌の炎症が引き起こされる6つの原因
肌の炎症は細菌やウイルスだけでなく、さまざまな要因が引き金となります。ここでは、肌の炎症を引き起こす外的要因・内的要因を解説します。
乾燥
通常、皮膚は一番外側にある角層(角質層)がバリアとなって細菌や摩擦、紫外線などの外部刺激から肌を守っています。このバリア機能が十分に発揮されるためには、肌が十分にうるおっている必要があります。
角層のうるおいを保つのが、水分保持機能のメインである「NMF(天然保湿因子)」や角層のすき間を埋める「細胞間脂質」、皮脂と汗が混ざりあってできた「皮脂膜」です。
しかし、過度な洗顔などによってこれらの保湿成分が洗い流されると、肌から水分が蒸発しやすくなります。さらに乾燥が進むと角層が剥がれてすき間ができ、普段なら侵入しない細菌やウイルス、アレルギー原因物質などが肌に入り込み、炎症を引き起こすことがあります。
肌が乾燥する原因としては、過度な洗顔のほかに、空気の乾燥や偏った食生活、不規則な睡眠なども挙げられます。
紫外線
紫外線は波長の長さによって、A波・B波・C波の3つに分けられます。このなかでもエネルギーが強いB波(UV-B)は、皮膚の細胞を傷つける「サンバーン」を引き起こし、炎症による赤みや痛み、ほてりを発生させます。炎症がひどい場合、やけどのように水ぶくれができることもあります。
さらに、紫外線は肌の表面を守る皮脂を酸化させるため、肌のバリア機能も弱まってしまいます。バリア機能が低下すると乾燥が進み、さまざまな外的刺激によって肌トラブルが起こりやすくなります。
化粧品による刺激
肌に合わない化粧品を使用すると接触性皮膚炎(かぶれ)という疾患を引き起こし、赤みやかゆみ、ほてり、ぶつぶつなどの症状が現れることがあります。刺激性接触皮膚炎は化粧品を塗布してすぐに症状が出る場合もあれば、時間が経ってから症状が出始める場合もあります。
また、接触性皮膚炎には、刺激の強い成分を使うことで起こる「刺激性接触皮膚炎」と、特定の物質に触れることでアレルギー反応が起こる「アレルギー性接触皮膚炎」の2種類があります。
接触性皮膚炎は化粧品に含まれるあらゆる成分で起こる可能性がありますが、特に香料や色素、界面活性剤、防腐剤、油脂などが刺激となりやすいです。化粧品の使用で肌が炎症を起こした場合はすぐに洗い流し、皮膚科で適切な治療を受けましょう。
摩擦
顔のこすり洗いや頻繁なピーリング、美顔器を使った過度なマッサージなどによる物理的な刺激も、炎症の原因となります。摩擦によって肌にダメージが加わると、角層や皮脂膜が損傷し、肌のバリア機能が低下して乾燥を招きます。その結果、外部からの刺激に弱くなり、炎症や肌トラブルを引き起こしやすくなるのです。
ホルモンバランスの乱れ
排卵後から次の生理までの期間に分泌量が増える「プロゲステロン」には、皮脂を増加させる作用があります。皮脂が過剰に分泌されると毛穴が詰まり、ニキビの原因となるアクネ菌が増殖し、炎症を引き起こしてしまうのです。
一方、女性ホルモン「エストロゲン」には、肌や髪のうるおいを保つ働きがあります。しかし、精神的なストレスや不規則な生活、加齢などによってエストロゲンの分泌量が減ると肌が乾燥しやすくなります。その結果、バリア機能の低下につながり、肌の炎症が起こりやすくなるのです。
ストレス
過度なストレスを受けるとホルモンバランスだけでなく自律神経も乱れ、交感神経が優位になります。これにより血管が収縮し、血流が悪くなることで肌のバリア機能が低下し、炎症が起こりやすくなるのです。
また、血流が低下すると、肌の生まれ変わりである「ターンオーバー」のリズムも乱れ、炎症が長引いたり悪化したりするリスクが高まります。
肌に炎症が起きたときの対処法
肌に炎症が起きた場合は、悪化させないためのケアが重要です。ここでは、肌に炎症が起きたときの対処法を解説します。
患部を触らない
肌が炎症を起こしている場合、できるだけ患部を触らないことが大切です。患部を触ると、炎症が悪化したり、手に付着している雑菌が侵入して化膿したりする可能性があります。また、髪の毛が肌にあたると雑菌が患部に付着することがあるため、ゴムやピンなどでまとめておきましょう。
低刺激のスキンケアを使う
炎症が起きているときは肌がデリケートな状態になっています。普段なら刺激にならない成分にも敏感に反応することがあるため、刺激の少ないスキンケアを使うのがおすすめです。
乾燥が気になる場合は、水分を保持して肌のバリア機能をサポートしてくれる「セラミド」が配合された化粧水や乳液を取り入れましょう。
肌の炎症を予防する方法
肌の炎症を予防するには、生活習慣やスキンケアを見直してバリア機能を維持することが大切です。ここでは、肌の炎症を防ぐポイントを5つ紹介しますので、健やかな肌を目指したい方はぜひ参考にしてください。
肌を常に清潔に保つ
炎症を予防するためには、常に肌を清潔に保つ必要があります。メイクや日焼け止め、皮脂、古い角質などの洗い残しがあると肌の刺激となり、ニキビや乾燥などの肌トラブルにつながります。朝と夜、1日2回の洗顔で肌についた汚れをていねいに除去し、清潔な肌をキープしましょう。
洗顔時にゴシゴシ擦らない
汚れをしっかり落とそうと肌をゴシゴシ擦ると、角層や皮脂膜がそぎ落とされてバリア機能が低下してしまいます。洗顔料は泡立てネットなどでしっかり泡立て、肌の上で泡を転がすようにやさしく洗いましょう。
なお、必要以上に洗浄力の高いクレンジングや洗顔料は肌に必要な角質や皮脂まで落としてしまう恐れがあります。メイクの濃さに合わせて適切な洗浄力のクレンジングや洗顔を使うことが大切です。
洗い終わった後もタオルでゴシゴシ顔を擦らず、やわらかいタオルを肌にやさしくあてて水気を吸収させましょう。
ていねいな保湿で肌のバリア機能を保つ
毎日のていねいな保湿で肌に十分な水分を与え、バリア機能を保ちましょう。特にお風呂上がりは湿度が一気に下がるだけでなく肌の温度も高いため、乾燥しやすい状態になっています。
入浴後はできるだけ早めにスキンケアを行い、しっかり保湿することが大切です。化粧水だけで終わらせると肌の表面から水分が蒸発してしまうため、乳液やクリームでフタをしましょう。
また、肌のバリア機能を保つには日常生活でも保湿を徹底することがポイントです。例えば、冬に暖房をつけっぱなしにすると空気の乾燥によって肌のうるおいが失われてしまうため、加湿器の使用や部屋干しなどで湿度を上げましょう。
紫外線対策を徹底する
紫外線によるダメージも肌の炎症やバリア機能の低下につながるため、毎日の紫外線対策を徹底しましょう。日焼け止めを使用するのはもちろん、日傘や帽子、サングラス、アームカバーなどによる物理的遮断も大切です。
日焼け止めは時間とともに汗や皮脂で落ちてしまうため、効果を保つためには2~3時間おきに塗り直しましょう。スプレータイプやパウダータイプの日焼け止めなら、メイクの上からでも気軽に塗り直せて便利です。
なお、紫外線は夏だけでなく1年中地上に降り注いでいるため、季節を問わず日焼け止めを使用することをおすすめします。
生活習慣を改善する
偏った食生活や睡眠不足、運動不足など、生活習慣が乱れると肌のバリア機能が低下し、炎症を引き起こすリスクが上がってしまいます。1日3食栄養バランスの良い食事を心がけ、脂質や糖質の摂りすぎに注意しましょう。
肌のターンオーバーを整えるためには、少なくとも6時間以上の睡眠を確保し、寝室の環境を整えて良質な睡眠をとることも大切です。また、ストレスもバリア機能の低下につながります。趣味や入浴などでリフレッシュし、ストレスを適度に発散させましょう。
まとめ
肌の炎症は、細菌やウイルス、化学物質などの異物を排除しようとする免疫システムによって起こります。乾燥や紫外線、摩擦、ホルモンバランスの乱れ、ストレスなどによって肌のバリア機能が低下すると炎症が起こりやすくなるため、注意が必要です。
肌の炎症を予防するには生活習慣やスキンケアを見直し、肌のバリア機能を整えましょう。ただし、炎症がなかなかおさまらない場合は皮膚科を受診し、適切な薬を処方してもらうことをおすすめします。