「どんな治療をしても、ニキビが治らない…」
そんなお悩みを抱える方は、一度は「イソトレチノイン」という薬の名前を耳にしたことがあるかもしれません。
イソトレチノインは、海外で重症ニキビ治療の第一選択薬として使用されてきた内服薬で、その効果は医学的にも高く評価されています。
その一方で、日本ではイソトレチノインは保険適用外であり、正確な情報が少なく、治療に不安に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、イソトレチノインの効果や副作用、使用の注意点まで解説します。
イソトレチノインとは?

イソトレチノインは、ビタミンA(レチノール)に類似した構造を持つ内服薬で、重症〜難治性ニキビの治療薬として世界中で使われています。
特に、外用薬や抗生物質などの一般的な治療で効果が見られなかったニキビに対して、高い効果を示すことで知られています。
欧米では「重症ニキビの第一選択薬」としてガイドラインでも推奨されている治療法ですが、現在(※2025年8月時点)のところ、日本国内ではイソトレチノインは未承認薬です。そのため保険適用はなく、一部の美容皮膚科や自由診療クリニックで自費診療として提供されています。
イソトレチノインの効果とは?4つのメカニズムでニキビを根本から改善

イソトレチノインの特徴は、多方面からのアプローチによって、ニキビ発生の原因を一度に抑制できる点にあります。ニキビの代表的な原因とともに、イソトレチノインの4つの効果を詳しく紹介します。
効果① 皮脂腺の縮小と皮脂分泌の抑制
イソトレチノインは、皮脂腺そのものを縮小させて、皮脂の分泌量を根本的に減らす作用があります。
皮脂は分泌量が多いほど毛穴が詰まりやすく、アクネ菌の繁殖しやすい環境になり、ニキビができやすくなってしまいます。そのため、皮脂の元からアプローチできるイソトレチノインは、他の外用薬や抗生物質よりもニキビの再発率が低く、長期的な肌の改善が期待されているのです。
効果② ターンオーバーの促進
イソトレチノインには、肌のターンオーバーを整える作用もあります。これにより、毛穴の入り口に古い角質が蓄積して詰まってしまう「面皰(めんぽう)」の形成が抑えられ、毛穴詰まりによるニキビの発生を予防します。
特に、白ニキビ・黒ニキビといった初期段階のニキビができにくくなるため、ニキビが繰り返しできるような肌質の根本改善にもつながります。
効果③ アクネ菌の減少
イソトレチノイン自体に抗菌作用はありませんが、皮脂量の減少によりニキビの元となるアクネ菌の増殖が抑えられる効果があります。アクネ菌は皮脂を栄養源としているため、皮脂の分泌が減ることでその繁殖が衰え、炎症性ニキビの発生リスクも自然と低下します。
効果④ 抗炎症作用
イソトレチノインには、ニキビによる炎症を抑える抗炎症作用もあります。これにより、赤く腫れ上がったニキビや痛みを伴うニキビ(膿疱性・結節性)などの炎症を伴う重症ニキビに対しても高い効果を発揮します。炎症が長引くことで色素沈着やクレーター型のニキビ跡になるリスクもあるため、早い段階で炎症を抑えることは、美肌への近道といえるでしょう。
このように、イソトレチノインは「皮脂の過剰分泌」「毛穴詰まり」「アクネ菌の増殖」「炎症」という、ニキビを引き起こす4つの主要因に対して一度に作用する、非常に優れた内服治療薬です。
イソトレチノインの副作用

イソトレチノインは、重度のニキビ治療に高い効果を発揮する一方で、副作用のリスクもしっかりと理解しておく必要があります。
ここでは、イソトレチノインの代表的な副作用やリスク、服用中に注意すべきポイントについて詳しく解説します。
よく見られる軽度な副作用
イソトレチノインを服用すると、皮脂分泌が大きく抑制されるため、肌や粘膜の乾燥が起こりやすくなります。これは多くの服用者に共通して見られるもので、以下のような症状が出ることがあります。
- 肌の乾燥・皮むけ
- 唇の乾燥
- 鼻の中の乾燥による鼻血
- 目の乾燥、ドライアイ
- 髪が細くなる、脱毛
中等度〜重度の副作用
一部の方では、やや注意が必要な副作用が見られることがあります。
- 肝機能障害
- 脂質異常(コレステロールや中性脂肪の増加)
- 筋肉痛・関節痛
- 頭痛、倦怠感
- 胃腸障害(食欲不振、吐き気など)
これらは服用中に定期的な採血検査(肝機能、コレステロール値など)を行うことで、早期に発見し、必要があれば服用量の調整や中止などの対応が取られます。
重大な副作用とリスク
特に注意すべき副作用には以下のようなものがあります。
① 催奇形性(妊娠中の服用は厳禁)
イソトレチノインの最も重大な副作用として知られているのが、胎児への催奇形性(形態異常)です。胎児に影響を及ぼす可能性があり、妊娠中・授乳中の服用は禁止されています。また、服用中および服用終了後1ヶ月間は避妊が求められます。
② 精神的な変化(うつ症状など)
まれではありますが、イソトレチノインの服用による気分の落ち込み、不安感、うつ症状が報告されており、過去に精神疾患の既往歴がある方は慎重に検討する必要があります。
③ 炎症性腸疾患・肝障害
潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸疾患、重度の肝疾患を持つ方は、イソトレチノインの服用が適さない可能性があります。
イソトレチノイン治療中に気をつけたい生活上の注意点

副作用の予防や肌トラブルを避けるため、治療中は以下のような生活上の配慮が求められます。
日焼け対策を徹底する
角質が薄くなっているため、紫外線に対して過敏になる傾向があります。日焼け止めや帽子、日傘などで予防をしましょう。

保湿ケアを丁寧に行う
肌・唇・目・鼻の乾燥は非常に多くの人に見られます。ワセリンや保湿クリームを常備し、こまめにケアを。
脱毛・ピーリングなど刺激の強い美容施術は控える
治療中〜治療後1ヶ月ほどは肌が敏感になっているため、美容施術は医師と相談の上で実施の可否を判断しましょう。
治療中・治療直後の献血は不可
服用中および終了後1ヶ月間は、献血を控える必要があります。1か月以上経過している場合も、献血を希望する際はイソトレチノインを服用していたことを献血前に伝えるようにしましょう。
イソトレチノインの効果を理解して、自分に合うニキビ治療を
イソトレチノインは、重症ニキビに悩む多くの方にとって有効な選択肢となり得る内服治療です。皮脂の分泌を抑え、アクネ菌の繁殖や炎症を抑制することで、再発のしにくい健やかな肌を目指せます。
一方で、副作用や使用条件もあるため、自己判断での使用は避け、信頼できる医師と相談しながら進めることが大切です。特に妊娠を検討している方や授乳中の方、持病がある方は注意が必要です。
不安なことがあれば、専門の医師にしっかり相談して、自分の肌に合ったより良い治療を選びましょう。